2015年6月15日月曜日

『スコット・ゴメスとケン・ダネイコ:ある話』 - スコット・ゴメス


 今回の記事はThe Players' Tribuneの記者が企画した、面白いインサイダーな記事です。

今までケン・ダネイコ選手について書かれていた記事がいくつかありました。彼は本当に良い選手なだけではなく、いい人だったんだと思います。





スコット・ゴメス - Scott Gomez

1979年12月23日生まれ アメリカ、アラスカ州出身

身長:180㎝
体重:98㎏

アメリカ代表4回

スタンレーカップ2回優勝

1999年からモントリオール、サンホゼ、フロリダ、そしてECHLを渡りプレーを続け、2014年にニュージャージに戻る。





ケン・ダネイコ - Ken Daneyko

1964年4月17日生まれ
カナダ、オンタリオ州出身

身長:183㎝
体重:88㎏

1983~2003年
2度AHLに降格するが、再びNHLに復帰。

スタンレーカップ2回優勝

スコット・スティーブンズ背番号4番と並び、背番号3番でデビルズの永久欠番となっている。






さっそく記事に参ります。誤訳があるかと思います。ご了承ください。

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 私たちは、ニュージャージー・デビルズのチームメイト;スコット・ゴメスとケン・ダネイコに、ある日の出来事について、両者の視点から話してもらう事にした。
 

スコット・ゴメス編

 1999年。僕は、NHL、ニュージャージー・デビルスのロスターに初めて載った、アラスカ出身の新人だった。練習が始まって一週が経ち、僕は転入生のような気分だった。成長期がとっくに過ぎた男達が居る以外は… ジュニアのホッケーの様にみんな仲良しな訳ではない。NHLでは、皆それぞれ家族や責任がある。僕はなるべく目立たない様に大人しくしていた。ロッカールームに入れば、様々なルールやエチケットがあることに気付く。何事にも上下関係が存在する。99年のデビルスだ。ロッカーを見渡せば、スコット・ニーダーマイヤー、マーティン・ブロデューア、スコット・”ファッキン”・スティーブンスが居る。実にやばい。

 ある日の練習後、若い新人である僕は、氷上に最後の一人になるまで残った。誰の目に止まらなくても、耳に届かなくても、最大限の努力をする。そしてロッカーに戻り、案の定、みんな帰っていた。

 僕はシャワーに入った。シャンプーかなんかをしていた時、突然、巨人の様な太い声が聞こえた。


『マジかよ!ありえない!!』


 僕は心臓が止まるかと思うほどびっくりした。もう誰もいないと思っていたから。


『嘘だろ!!ありえるはずがない!!』


 声ですぐにわかった。やばい、ケン・ダネイコだ。頭にたくさん泡が乗ったまま、どうしようかと考えた。彼について、唯一知っていたことは、彼のあだ名は『ザ・キング』であることで、僕はもっと怖くなった。僕は最低な事態を予測し始める。ダノ(ダネイコ)は練習後一人でいるのが好きだったのか、きっと彼はいつも最後の一人で、今は誰も残っていてはいけなかったのかも知れない。ここに居てよかったのかと事前に誰かに聞くべきだった…


『ウ・ソ・だ・ろ!!!』


 そして僕はシャワーから顔を出すと、ダノは鏡の前に立って、ハルク・ホーガンの様に胸筋をピクピクさせていた。 

 僕は『やあ、キング。大丈夫?』と聞いた。

 彼は真顔で振り向いた。


『大丈夫なんかじゃない!36歳の男がこんなにも格好良いなんて、ありえないぜ!!』


―――15年後、僕たちは親友になった。







ケン・ダネイコ編

 僕は、控えめに言ったとしても、エネルギッシュで、強烈な男だ。当時、筋トレにハマっていた。練習が終わり、ゴーマー(ゴメス)はシャワーに居たらしいが、僕は知らなかった。当時では、年齢で言うと、チームの中でも上の方になっていた頃だったが、まだまだ現役並みに強かった。鏡越しに、自分の肉体美を眺めていた。うめきながら。叫んでいたかもしれない。プロレスの選手の様に。

 
『マジかよ!ありえない!!』


 ただの遊びだ。自分一人だと思っていた。

 スコットはいつもベテランの選手等にとっても敬意を払っていた。シャワーでは緊張していたに違いない。スコットの思考が想像できる。「うわあ、彼は何で叫んでいるんだ。ダノはこの組織に長い間居る。彼の前にシャワーを浴びてはいけないのかも知れない」と。

 彼がおどおどとシャワーから顔を出したのを覚えている。


『やあ、キング。大丈夫?』


 筋トレの後だったから、興奮状態だった。僕はきっと、



『大丈夫なんかじゃない!36歳の男がこんなにもマッチョだなんて、ありえないぜ!!』

とか何とか言ったと思う。


 その後の彼の表情は最高だった。安心のため息が聞こえた。考えてみると、19歳の少年がロッカーで、いい年のベテランが鏡の前で呻き声を上げていたら、誰でも少しは怯えるだろう。


 ははは、そして僕たちは2回スタンレーカップを一緒に勝った。この出来事に間違いはなかったはずだ。

2 件のコメント:

  1. いつも読んでいて楽しませてもらってます! もっといろいろ記事を楽しみにしています!

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    1. ありがとうございます!返事が遅れてしまい申し訳ありません。
      これからもボチボチと投稿していこうと思ってます。
      今後とも宜しくお願いします。

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